2009年01月15日

『そして、私たちは愛に帰る』

そして4.jpg  原題: 「AUF DER ANDEREN SEITE/(英題)THE EDGE OF HEAVEN」 2007年/ドイツ=トルコ
監督・脚本:ファティ・アキン
キャスト:バーキ・ダウラク、ハンナ・シグラ、ヌルセル・キョセ
公式サイト

 ドイツとトルコ、2千キロに渡ってすれ違う3組の親子が、運命に翻弄されながら愛と希望を見いだすまでを描く。ドイツの名女優ハンナ・シグラをはじめ、トルコを代表する実力派キャストが共演。第60回カンヌ国際映画祭最優秀脚本賞と全キリスト協会賞をはじめ、数々の映画賞を受賞。
(シネマトゥデイより抜粋)

 ちょっと気恥ずかしくなるような直球タイトル(!)のせいで敬遠するには惜しい作品かもしれない。もっとも逆にこのタイトルに惹かれて映画館に足を運ぶ観客もいらっしゃるだろうからそれも良いのかな。

 
そして3.jpg
(あらすじ)*** ドイツ北部ブレーメンで暮らす老人アリは退職後、同じトルコ人娼婦のイェテルを身請けし一緒に暮らし始めるが、事情を聞いたアリの息子で大学教授のネジャットは最初は驚くものの、トルコで大学に通う娘への仕送りの為に娼婦になった事を聞き「娘に会いたい」と泣き出すイェテルにすっかり同情してしまう。 しかしある日、アリはつまらぬ口論からイェテルを殺めてしまう。父親が許せない息子ネジャットはイェテルの娘アイテンを捜しに自身のルーツであるトルコへ渡るが、アイテンは母を捜しにドイツへ不法入国していた。。。*****
 
 監督は御自身がトルコ移民2世であるファティ・アキン。 
ヨーロッパにおけるトルコの微妙な立場が伺えるような内容なので、もちろん何も知らずに見ても人種や宗教を超えた愛の結びつきにしんみりと感動するのは間違いないけれど、少しばかりの前知識があればより一層理解が深まる類の作品かもしれない。

 親子の衝突、無理解。しかし水より濃い血の繋がりと深い愛情。一方でまったくの他人だけど互いを思いやる気持ちがいつしか不思議な縁で交差して結ばれていく様子が面白かった。
ドイツ人の母娘役のハンナ・シグラの憂愁をたたえた眼差しが素晴らしく、おそらく自分も若かりし頃に政治闘争に敗れた経験を匂わせ、自分と同じ道を歩んで欲しくない想いから心配に身を焦がしながらも、最後には運命に任せ、娘の気持ちを尊重する母親が最高でした。

星の流れる果て.jpg  ところで、劇中に老人アリの台詞の一部とかトルコの女子刑務所で女囚たちの主な収監理由が「夫殺し」という場面があって、それでふっと思い出したのが昔観た『星の流れる果て』。 これがなかなか面白いサリー・フィールド主演映画で舞台はイランだが、典型的な男尊女卑の国(宗教的なもの?)で、"女子供は男の持ち物”という考え方に戦慄を覚えた記憶が蘇ってきた。 そういう状況では「夫殺し」もさもありなん・・だなとたらーっ(汗)  
 

 この監督の2004年『愛より強く』はDVD鑑賞したが感情表現がちょっとばかり激しすぎて、痛々しくて、私のような歳のものにはキツく思われたけど、今回のも「痛い」映画には変わりないけれども”親子の愛情に的を絞った”ところで、私を含めて万人に受け入れやすくなっているのでは?と思う。
posted by マダムS at 10:42| Comment(6) | ドイツ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
マダムの感想を拝見して とても興味が湧きました。是非、DVDで観てみたいです!
ファティ・アキン監督の「愛より強く」の世界は 私にも少々濃過ぎるーー!と思ったのですが モーリッツ君の「太陽に恋して」は大好きな作品でした。
しばらくモーリッツ祭りを開催してくらいです(笑)
監督が自分のルーツに向き合って描く作品には秀作が多いですね。
それだけ思いも深く濃く複雑だということでしょうか。
『星の流れる果て』も未見なので探してみようと思います。
それにしても夫殺しとは・・、恐ろしいお話ですね(>_<)
Posted by カポ at 2009年01月15日 13:33
★カポさん
早速反応して下さって有難う〜♪
そうそう!「太陽に恋して」は気になりつつ未だ未見なのでしたー! モーリッツ君、存在感ある俳優さんですよね〜 あら〜カポさん”お祭”開催されてたとは!!(^^)b お母様も有名な女優さんなんですよねー「4分間のピアニスト」はご覧になりました?

 >監督が自分のルーツに向き合って描く作品には秀作が多い
私もそう思います。有名になってある程度自分の自由に映画を作れるようになって、やっと自分のことを語れるのでしょうか・・渾身の作って多いと思います。
「星の流れる果て」は、以前観てかなりカルチャーショックを受けた作品で、忘れられなくって。。何処かで見つかるといいんですが。私ももう一度見返したいです。
「夫殺し」のくだりは台詞で出てくるだけなんですけど、暴力的支配的な夫に対して一気に爆発するんだろうな〜なんて思ったわけでした(ーー;)
Posted by マダムS at 2009年01月15日 18:59
こんばんは(^^)
本当に…この邦題は納得いかないんですが(愛より強く…も)それはさておき。
親子というテーマに絞ったことでより幅広い年齢層に受け入れられる作品かな、と私も思いました。
(その分アキン監督のロック!な感じがおとなしく感じてしまったりもしたのですが)
ハンナ・シグラは本当に素晴らしかったですよね。
そしてマダムの視点も面白いですね。駆け込み寺って日本だけなんでしょうかね。駆け込めればいいですけど(苦)。
Posted by わかば at 2009年01月16日 21:36
★わかばさん
やっぱり? クサイよ邦題・・なんてね(笑)
でもこの位にしないと監督のファンとか以外の観客には目に留まらないかも。 実際私の観に行ったとこは”劇場”のリピーターが多いとこなので。
アキン監督ファンの方にはやはりちょっと物足りない位大人しかったですか?(^^) 
わはは。。私特有の解釈を面白いと言って下さって有難うございます♪ ドイツ人母の見方が一般の見解と違うかも?でも台詞を良く聞くとそうだと思うのですよ(^^;)
「女子供は一家の主である男に従うもの」というのが”法律”である国ではきっと”駆け込み寺”なんてないんでしょうね〜(ーー;)
Posted by マダムS at 2009年01月17日 10:13
こんばんは、マダム。
ご覧になりましたね、「そして私たちは愛に帰る」。前売り券を買うときも、ちょっと気恥ずかしかったですね、思い出すと(笑)。
結構、アルモドバル的なお話だと思いましたが、いかがですか?特に、亡くなったドイツ娘の母の描き方は、「女は強し、母はもっと強し」と、感動しました。ただし、その先に、ダメおやじと、煮え切らない息子のドラマがあるのが、男から観ると、ぐっときましたね。あのラスト、好きですねぇ(笑)。

*今日は、「きつねと私の12か月」観ました!きつねが好きなんです(笑)。ほんとにかわいかったです。特に親子きつねが寄り添って寝ている姿!でも、全然お客さん入ってませんでした。公開したばかりなのに、「いよいよ、1月30日まで!」だそうです。「フランスで大ヒット」の呪縛は、やはり存在しましたね。


Posted by けんけん125 at 2009年01月18日 23:48
★けんけん125さん
はーい!観てまいりましたよ(^^)
今回は端折って「そして私たち〜1枚」とかなんとか言ったと思います(爆)
おお、そう言われてみれば”アルモドバル的”かもしれませんね〜 強い女たちと泣き虫男!好きです!!(笑)
ラストはあのまま日が暮れたらもっとドラマティックだったかもと思うのですが、わざとそれは避けたんでしょうか・・どう思われます?

「きつね〜」可愛らしい女の子と動物!それってもう反則的な主題じゃありません? そこにいるだけで泣けるという・・。けんけんさんはきつねがお好きでしたか(^^)私は狼が好きなんです(笑)。
夏休みお子様向け映画だと思われて大人の観客は敬遠しているのかもですねえ。。そうですか、地元でも見れそうなので気になっていたんですが早く行かないと終わってしまいますねー! 
Posted by マダムS at 2009年01月19日 15:52
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