2007年01月12日

『愛されるために、ここにいる』

愛されるため.jpgステキな邦題だと思った。。

観終わってから、しみじみこのタイトルが示す意味に痺れる・・

久々に映画が残した深い余韻に酔いしれ、もう一本鑑賞予定だったのをキャンセルしてフワフワと帰途についたのだった。


予告編を観ただけでは食指が動かなかったわたしだけど・・
ご覧になった方の評判があまりにも良いので(特に私の”ある偏見”を吹き飛ばしてくれるようなわかばさんのレビュー)、駆けつけて良かった♪「よそ様の思いに耳を傾ける」ことも大事だな。。
それは正に、この作品の持つテーマにも通じることだと思う。
愛される2.jpg
『愛されるために、ここにいる』2005年フランス
原題:Je ne suis pas la pour etre aime
監督:ステファン・ブリゼ
出演:パトリック・シェネ『読書する女』、アン・コンシニュイ『灯台守の恋』
2006年セザール賞3部門(主演男優賞、主演女優賞、助演男優賞)ノミネート

公式サイト

<Story>*****50歳を超えたジャン・クロードは親の後を継ぎ裁判所の執行官という地味な嫌われ仕事に嫌気がさす毎日。老人施設に入所中の父親は尋ねて行っても文句ばかりだ。そして体力の衰えを感じ始めている・・。ある日、医者に薦められ習い始めたダンス教室で「貴方を知っている」と中年だが美しい女性に声を掛けられたジャン。彼の味気ない人生に射した一筋の光? 共にダンスの練習をするうちに次第に心を通わせるようになる二人だが、ひょんなことから彼女には婚約者がいる事がわかる。ショックで動揺するジャンは老いた父親に当り散らしてしまう・・*********

 主人公のジャンは50をちょっと過ぎたという設定ながら、演じた俳優パトリック・シェネの顔の皺の深さが最初はどうみても”老人”に見えてしまい、老人ホーム入所中の彼の”父親”との年齢差がはっきり際立たないのが気になったのだけれど、くたびれた中年が恋をしてどんどん生き生きと素敵になっていく様子を演じて、それがいつの間にかそのように思えてくるのが不思議というか、実際、背筋がシャンと伸びてきてダンスもサマになり。。スーツもパリっとすると男性は素敵な紳士になるものだと感心する。

 それは”恋”が人に及ぼすマジックなのだな?と微笑ましく、親子ほど年が違う二人の恋の行方を見守りつつ、邪魔な横恋慕男がいつ意地悪をするのかとハラハラもさせられ(笑) 魅惑的なタンゴの調べに酔いしれ・・ラブ・ストーリーとしての部分を楽しんで終わる所だが、それだけでないのがこの作品の奥の深さ・・。

 この男も、その父親も・・愛情を素直に表現する事がスーパー級に苦手な典型的な野暮人間。 自分が常に正しいと思い込み、相手の思いに耳を傾けたことがあったのか疑わしいような今の人間関係、親子関係になっている。 心の奥にもし少しでも優しい気持ちがあったとしても、人間は言葉や行動に表さなければそれはすべて無に等しい。 そんな失敗を繰り返そうとしていた主人公が、老境を直前にした人生の転換期にはた!と立ち止まり、気づき、今までの人生をリセットする・・ そんな素敵な話なのだった・・。

 タンゴはサリー・ポッターの「タンゴ・レッスン」('97)を観るまでどちらかというと激しい動きの体育会系のダンスだと思っていた無知な私・・。頬と体を寄せ合い、これほど静かな動きでありながら官能的なタンゴがあったのだな〜とその時感動したのだけれど、今回も印象的なタンゴのテーマ曲で踊るもう若くない二人の顔に刻まれた皺がどんどんステキに見えてきて、ジワっと泣けてくる。 
あの秘書が躊躇いがちにやいたお節介のお陰で。。人の言う事の真意に耳を傾けてみたお陰で。。新しい人生に一歩踏み出せそうな予感を感じる暖かなラストだった。

 大好きなサンドリーヌ・ボネールがヒロインを演じた「灯台守の恋」('04)という素敵なフランス映画で、ヒロインの娘役を演じたアン・コンシニュイだが、彼女の好感度もバツグンで、彼女の顔を見ているとこんな素敵な皺ならOKだなと思えるよね♪
posted by マダムS at 08:16| Comment(16) | TrackBack(10) | フランス映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
わかばさんのレヴューに、見る気をそそられました。
Posted by Bianca at 2007年01月13日 14:41
Biancaさん
ひゃ〜ん、まだレビューが書けないワタクシ。
すみません・・明日こそ・・
わかばさんの素晴しいレビューをご覧下さい♪
Posted by マダムS at 2007年01月13日 23:36
こんばんは!ご覧になったのですね。素晴らしい作品でした。フランス映画祭で観損なった映画だったので公開されて良かったです。フランス映画万歳ですね!

さてMACHIさんが私のブログにURLを紹介されましたので良ければ訪問なさってくださいませな。
会員制のようです。私もまだ行ってませんが...
Posted by margot2005 at 2007年01月14日 19:33
margot2005 さん
トラコメ有難うございます♪
やっと観て参りました〜! 食わず嫌いしないで観に行って良かったです。
今年もまたフランス映画祭3月開催ですね! ドヌーヴさんが団長のようです。
MACHIさんのコメントは管理人様しか見えないようですよ?
Posted by マダムS at 2007年01月14日 21:25
こんばんは。
記事のアップお待ちしてましたー。
ありがとうございます♪
顔の皺って整形などして、とっちゃいかんですね!爆
あんな風に年を重ねられたらいいなと思うのでした。
それと髪の毛のアップ姿も素敵だったな。
あの後れ毛の感じがすごく自然でいい感じ。ピシッとしてないのがまたいいー。真似したらぐちゃぐちゃだって言われて凹んだけれど。爆
フランス映画祭、今年はもう少し行けたらいいなと思ってます!
Posted by シャーロット at 2007年01月14日 21:45
ぼんそわ。
マダムの食指が動かなかった”ある偏見”というのは結局、何だったのでしょうかー??
とにかく、ご覧いただけてよかったですー。
フランス映画の魅力が凝縮されたステキな作品ですよね。

そういえば、「灯台守の恋」を観た時、始まってしばらくの間、サンドリーヌ・ボネールって感じが変わったあーと思って観ていました。それが別人のアンヌ・コンシニでした・・・。(ちょっと似てますよね?)娘役のアンヌの方がちょっと年上なのかな。2人とも大好きな女優ですー。
フランス映画祭では、灯台守のフィリップ・リオレ監督作品も上映されるようですね。行きたいなー
Posted by かえる at 2007年01月14日 21:49
おはよーございます。
タンゴは大人のダンスですよねー。若い娘っこがが踊っちゃいけません、というかゆえに憧れるのが分かるというか。
ジャン=クロードと父親はああいう仕事を継いでるということで感情を出しにくい質になってるのもあるんでしょうね。彼が自分の息子に向かって出て行きなさいというところもじわんとしました。
Posted by mako at 2007年01月15日 08:56
シャーロットさん
皺もね、魅力的に見えるように年取りたいものですわねーーほんとにって、私はもう十分年取ってますが・・(^^;)
髪の毛のね、後れ毛ね、あれも色っぽいですね^^「ぐちゃぐちゃ」だなんて〜ダレが言ったのぉ?シャーロットさん!大丈夫ですよ!自信持って下さいまし(笑)
フランス映画祭、今年も楽しみですね♪

かえるさん
うわはは。。偏見はですねー 大したことじゃないんですが、思わせぶりに書いてしまってスミマセン! 実は私、ルコント風味の(初老の男→若く美しい女への偏愛)がちと苦手でして・・今回のもそんな話なのかと勘違いしてたものですから・・
全然違ってましたねー だから映画も観てみないとわかりませんね!!
そうそう!ボネールさんと感じが似てますよねっ!考えてみれば「灯台守」ではそれでキャスティングされたのかもしれませんものねぇ(笑)年上のようですね。チャーミングだわ〜♪
えっ?フィリップ・リオレ監督作品も来るんですか?>仏映画祭。それは嬉しいー♪Puffさんにもお知らせせねばね^^

makoさん
ですねー! 大人のダンス!!
ちょっと気恥ずかしいですが(特に日本人は苦手かも)憧れちゃいます(若くないけど 汗;)
執行官という職業はそうなんですね、最初は可哀想と思っても次第にそういう感情を押し殺せねばこの仕事を続けていけないと、無表情にならざるをえなくなっていくんでしょうね。。父親の方もやはり感情をいつも押し殺している内に、息子に対しても愛情表現すら出来なくなっていったんでしょう・・。
自分の二の舞になったら「大変」と気がついてほんと良かったですよねぇー これからは少しは観葉植物なんかも置くようになるかもしれませんね〜♪じわん。
Posted by マダムS at 2007年01月15日 19:46
こんばんは。なんか、リンクしていただいちゃってありがとうございました(^^)たいしたこと書いてないので恐縮です。。。
でも、マダムに観ていただけて嬉しいです。マダムの偏見とはそういうことだったのですね(上記コメント)。
この映画、素晴らしいポイントはたくさんありますが、それこそ、この二人が今後実際どうなるかは、ある意味どうでもいいところもよかったと思いました。うまくいってもいいし、いかなくてもいい。どっちに転んでも、二人にとってこの出会いは大きなものになったはず。そう思わせてくれました。
秘書と犬もよかったですよね♪
Posted by わかば at 2007年01月15日 22:22
マダムこんばんは。「愛されるために、ここにいる」、ほんとによかったですね。私は昨年のクリスマスイヴに観て、06年のマイベスト10のトップの座を、「麦の穂をゆらす風」から土壇場でこの作品に変更しました。配給したセテラさん同様、これは、「ムッシュ・カステラの恋」に匹敵するフランスおやじ映画の極み!もちろん、「灯台守の恋(これも大好き)」で、私はベアール出てたっけ?と一瞬思ったアンヌ・コンシニュイも、とっても素敵で、このまま終わらないでほしい!と思ったくらいです。彼女は、昨日観てきた「あるいは裏切りという名の犬」にも、ドパルデューの妻という、あの映画では目立たない役で出てましたけど、ますます美しくって、ヒロインよりずっと好みでした。
そうそう、マダムがおきに召した邦題ですが、原題は「愛されるために、ここにいるわけじゃない」なんですよね。こうなると中年男のやせ我慢な感じがにじんできて、これもまたいいタイトルかも。
Posted by けんけん125 at 2007年01月16日 01:16
これ予告編で見たときから心臓ワシづかみにされています。ああ。やっぱりいいのですね!どなたかの記事がないかと探していたんです。早速近々に・・
Posted by Cartouche at 2007年01月16日 12:28
わかばさん
いえいえ、こちらこそ有難うございました! そうなんです、予告編でタンゴには惹かれつつ変な勘違いしていたのを、わかばさんの感想読んでそれが覆りまして・・観に行って良かったです!感謝♪
そうですね、二人共それぞれにとってターニング・ポイントになったという点が重要なんですよね^^ 頑固父もそんな出会いがあればと思うと・・可哀相ですよね。わかばさんが”泣けた”ツボもわかるような気がします。

けんけん125 さん
こんばんは! 今年もよろしくお願いしますね^^
んまぁ〜!クリスマスイヴにご覧になったとは♪なんと素敵♪
ベスト・テン入りとは頷けます! 私も早くも今年のベスト映画にランク・インの模様!!(我がブログは本数制限ないので 笑) うふふ。そう言えばベアールにちょっと似てるかもしれませんが、ベアールほどタレ目じゃない目がチャーミング(暴言)ですよね、目尻の皺までチャーミング♪ お?「あるいは裏切り」にも出ていたんですか?売れっ子ですよねぇ。
原題も知っておりますよん♪ Je ne suis pas〜ですもんね、そうですね、やせ我慢チックな印象の原題も確かに捨てがたいです(^^)b

Cartoucheさん
お?Cartoucheさんがまだだったとは意外ですよ!
是非是非! おススメです♪
感想お待ちしておりますね(^^)/
Posted by マダムS at 2007年01月16日 22:36
マダム

遅ればせながら私も行ってまいりました。
いや〜この映画は大当たりだね。
ジーンとしちゃったし、
こういう静かな、でも激しい(なんだそりゃ?笑)
愛に私はため息が出ちゃいました。
この監督、まだ新人?でもないけど、
そんなに作品数多くない人なのにすごーい!!
Posted by chocolate at 2007年01月19日 15:04
chocolate さん
おっと、チョコさんも観たのですね^^
そうそう!静かで激しいって解りますよ♪
大人な恋って深く静かに潜行するものです(意味不明) 
監督の名前は私も初めて聞きました。まだ若いんですよねー!なのにこの成熟ぶりは驚きですね。
Posted by マダムS at 2007年01月19日 22:06
私も見て参りました〜。ルコント作品のような静かな、けれども情熱を内に秘めたふたりの想い。。良かったですね。50歳という年齢の微妙さがよく表されていました。アハハ。。私もちょっとトシ取りすぎと思いました。おじいちゃんが出てきてびっくりでしたもん。
Posted by Cartouche at 2007年01月21日 10:49
Cartouche さん
おお、宣言どおりお出かけになりましたねっ♪
そうですねぇ もうちょい実年齢が近い俳優さんいなかったのかしらと思いましたが・・(^^;)
やや・・Cartouche さんはルコント作品はお好きなのでしょうか?
Posted by マダムS at 2007年01月21日 20:31
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