2008年05月04日

イタリア映画祭2008−B 『ひばり農園』『湖のほとりで』

イタリア人監督が描く 「アララトの聖母」?/アルメニア民族の虐殺 と
「ツイン・ピークス」?/世界で一番美しい死体・・
ひばり農園2.jpg  湖のほとりで.jpg
『ひばり農園』タヴィアーニ兄弟最新作
07年ベルリン国際映画祭特別招待作。 
トルコにおけるジェノサイド(集団殺戮)の歴史的実話を描いた問題作。
モーリッツ・ブライプトロイやチェッキー・カリョなど国際俳優も出演。
『湖のほとりで』
2008年度ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞 最優秀作品賞、監督賞、主演男優賞など主な賞総なめ受賞したヒューマン・サスペンス。

どちらも さすがに見応えある作品となってました。

『ひばり農園(La masseria delle allodole)』
2007年イタリア/ブルガリア/スペイン/フランス
ひばり農園3.jpg
監督:パオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ『グッドモーニング・バビロン!』原作:アントニア・アルスラン「ひばり館」
出演:パス・ヴェガ、モーリッツ・ブライプトロイ、チェッキー・カリョ、アルシネ・カンジャン

 19世紀末、第一次大戦大戦前後のトルコで・・裕福なアルメニア人家族一家が改築祝いのパーティをしている。 楽しく歌い踊り、明日にもやってくるイタリアの兄家族を迎え入れる準備に忙しい。しかしすでにトルコ人によるアルメニア民族の大虐殺の足音がこの農園にも迫っていた。

 ナチス・ドイツによるユダヤ民族虐殺の歴史は今や世界中で誰でも知っている事実だけれど、同様なこと(同様な思想で)がトルコでも行われていたなんて・・。 男は惨殺され、女子供は強制移住のため連行され徒歩での過酷な旅を強いられる。 草木も生えない荒地を行く途中では、反抗や逃亡はすぐ処刑、子供を餓えさせない為に女は兵士にその身と引き換えにパンを稼ぐ日々。あまりの悲惨さに心が痛む。

 映画では、そんな状況でトルコ人でありながらアルメニアの女性と恋に落ちる将校や、強制移住の途中で助けの手を差し伸べる兵隊、一家に世話になった恩義から逃亡の手助けをする元使用人などが登場して過酷なストーリーに少しだけ陽が射すのだけれど・・。とにかくヘヴィな話には違いない。 
tcheky_karyo.jpg この数年で今まであまり知られる事のなかった悲惨な歴史的事実を、映画を通して私達は知る事が出来る様になったことはその度に言うようだけれど大事な事だと思う
(たとえご飯を食べながら「大変ね」と言うだけ?とのジレンマを感じたとしても)
農園主の役で出演したチェッキー・カリョユダヤ系トルコ人だそうで試写後に号泣したそうです。複雑な思いだったのでしょう。

アララト.jpg『アララトの聖母』2002年カナダ/ DVDで
同じアルメニア人虐殺を描いたアダム・エゴヤン監督作品
より理解を深める為にこちらも観てみました。
ダヴィアーニ監督がその時代のトルコを舞台に時間通りに話を進めるオーソドックスな方法で実直に同じ事件を描いているのに対し、こちらは現代のアルメニア人青年が自分のルーツを探り、アイデンティテイを確立していく構成になってました。名の知れた俳優も多く出演しており、欲張りなほど色んなテーマを盛り込んでいてコチラの方がまあ今風かも。
******************


『湖のほとりで(La ragazza del lago)』(2007年イタリア)
湖.jpg
監督:アンドレア・モライヨーリ
原作:カリン・フォッスム「見知らぬ男の視線」
出演:トニ・セルヴィッロ、ネッロ・マーシャ、ヴァレリア・ゴリーノ 他

 犯罪とは一見まったく無縁そうな山間の長閑な村の湖のほとりで、若く美しい女性の死体が発見される。定年間近な老練な刑事サンツィオはその死体の様子から「彼女を愛していた者の犯行」と判断し、早速村の住人たちに聞き込みを始めるが、誰もが怪しくて・・。 ときたらまず「ツイン・ピークス」思い出しますよね(笑)

 事件を解決していく過程を描くサスペンス映画ではあるのだけれど、村人それぞれに抱えた様々な問題も重く、刑事自身も若年性痴呆症の妻と年頃の娘を持っており、家庭に問題が・・という設定。悩み多きごく普通の人たちが織り成す人間ドラマでもあるのでデビット・リンチとはまったく違いますあせあせ(飛び散る汗)

 ロケ地はイタリア北部のアルプスを臨む地帯で、原作のノルウェーに酷似しているとのこと。原作の雰囲気を壊さずに映画化には成功しているようです。今年のイタリア・アカデミー賞を総なめにした感のこの作品ですが、確かにじんわり胸に迫るものはありますが、そこまで?という感じもしました。







posted by マダムS at 17:40| Comment(10) | イタリア映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「ひばり農園」本当にヘヴィな作品でしたねっ。でもとても見応えがある作品でもありました。
私は以前に「アララトの聖母」を見て(大分詳細は忘れているけど)この歴史的事実を知りました。映画によって、知ることが出来ると言うことは有り難いです。

トルコはEU加盟をずーと望んでいるけど、フランスがこの事のために強固に反対しているとか聞きました。
私はトルコが親日国であると言うこと。
あの湾岸戦争の時に、イラクにいる日本人を日本政府が時間的に助け出すことが無理だった時に、トルコ政府が飛行機を出して、数百名の日本人を無事に日本まで届けてくれたと言うことをこの映画を見ながら、ちらっと頭を過ぎったので、とても複雑な気持ちでした。

あの状況下において、生きると言うことの悲惨さ、絶望感、怒り。
見ている方は胸がつぶれる思いでしたが、
かすかな希望とトルコ人の元使用人や兵隊も描かれていた事が救いでした。
また、あの終わり方がとても良かったと思います。

Posted by 紫の上 at 2008年05月08日 23:53
★紫の上さん
映画祭、楽しまれたようで良かったです♪
何本ご覧になったのでしょうか? あ、そういえば今年はドイツ映画祭の開催は無くなってしまったらしいですよー!( ̄ロ ̄;)

「アララト〜」ご覧になってらっしゃいましたか! さすがです!
 この集団殺戮の件はトルコは未だに事実とは認めてはいないらしいですねぇ。。まだそんなに古い昔の話ではないので、生き残った人の子孫などの証言などあるでしょうに。。
正にこの原作者の女性はラスト・シーンで船に乗った3人の中の一人か、その娘か?などと思ったりしました。
 そうそう!イラクの日本人脱出劇なんてありましたねぇ! 「明治時代に起こったトルコ船沈没の時に助けてくれた恩返し」だったとかで、、胸が熱くなったりしましたけど。
どの国にも闇の部分があるのかもしれませんねえ。。(ーー;)


Posted by マダムS at 2008年05月09日 07:55
「アララトの聖母」のご紹介ありがとうございます!今度観てみようと思います。私はイタリア映画好きなだけで、他の国の映画には疎いので、こういう作品を紹介していただくととっても参考になります^^
「湖〜」はやっぱりそうですよねー。とりたてて鮮烈な印象が残ったというわけではないので、ドナテッロの最優秀作品賞っていうのはちょっと首をかしげたくなります。いい映画だとは思うのですけど。
Posted by puntarellina at 2008年05月09日 14:05
ガ〜ン!ドイツ映画祭、今年の開催はなくなってしまったのですかっ。
そろそろチケットを購入する頃かと思っていたんですが・・・。
残念です。でも、情報有り難うございますm(_ _)m

イタリア映画祭ですね。マダムは6本でしたかぁ〜。頑張ってご覧になったのですねっ!
私は2本です。
後一本は舞台挨拶付きの「まなざしの長さをはかって」です。
サスペンスなれど、イタリアのポー河流域の小さな村が舞台ですが、田舎の映像が美しかったです。
でも、静かな湖に小石を投げると波紋が広がるように、何事もなくなく見えた村にもいろいろな問題が浮かび上がってくる様子を描いていて、とても見所がある作品でした。
主演女優さんはあの舞台挨拶の時にもいましたが、サイン会の時にアップで撮ることが出来ました。身近で見ると小顔な綺麗な女優さんでしたよっ!
あ、サインは時間がなくてしてもらえなかったですが・・・。

>イラクの日本人脱出劇なんてありましたねぇ!「明治時代に起こったトルコ船沈没の時に助けてくれた恩返し」だったとかで、、胸が熱くなったりしましたけど。

さすがマダム、よくご存じですねぇ〜!
嬉しいです〜〜!!本当にこの話を聞くと胸が熱くなって、涙がほろり。
映画から世界の歴史を知ったり、最近、私自身、日本の近現代史が知らないことに気がついて、色々と歴史に注目しております。
映画を深く理解するにはその背景もより知っていた方がよいかとも思っている今日この頃です。
Posted by 紫の上 at 2008年05月09日 20:08
★puntarellina さん
いらっしゃいませ♪
「アララトの聖母」は 「ひばり農園」とはまた違った切り口で同じ事件を描いていて、現在でもこの事件が深く尾を引いている事が解りますので、合わせてご覧になると興味深いかも。やはり辛く悲惨なシーンもありますけれども(涙)
「湖」そうなんですよ〜puntarellina さん
に教えて頂いて「ドナテッロ賞だわっ」と頑張って最終日に観に行ったんですが・・いい映画だとは思うのですけどね(^^;)
Posted by マダムS at 2008年05月09日 20:10
★紫の上さん
そうなんですよー ドイツ映画祭! 残念ですよね〜 この数年「善きソナ」とか素晴しいドイツ映画がありますから、もっと観てみたいですよねぇ!
おお「まなざしの〜」ご覧になったのですね? 私は座談会だけ見たのでその女優さんちょっと態度が悪いなぁと思ったのですが、サイン会では愛想良かったようですね(笑)
今回は写真も撮りませんでしたー(去年と力の入り方が違います 笑)
 >映画を深く理解するにはその背景もより知っていた方がよい
まったくその通りですよね! 知らないとまったく理解不能な作品もありますし。紫の上さんにはいつも色々教えて頂いて感謝しております!!(^^)/ これからも情報交換引き続きよろしくお願い致しますね!
Posted by マダムS at 2008年05月09日 20:46
「ひばり農園」、タヴィアーニ+モーリッツ君なので、ぜひとも見たかった作品なのですが見逃しました。これが昨年の作品ってことは見逃したのも昨年??なんだかずいぶん昔のことのように感じます。

上映時間が中途半端だったので、いつ行こうかなと思ってるうちにあっという間に公開期間が終わってしまって・・・。

アルメニア人はフランスにもたくさんいるのですが、知人のアルメニア人はフランスにいてもアルメニア出身というだけで辛いことがたくさんあると言っていたのが印象的なのですが、日本にとっては遠い話だったこのことを初め、知らないことが多すぎるな・・・と反省することしきりです。

それから2番目の作品の、
>刑事自身も若年性痴呆症の妻
という設定、日本の映画でありませんでしたっけ?確か刑事は役所広司とかで。はっきり思い出せないのがもどかしい・・・。
Posted by nouilles-sautees at 2008年05月09日 23:17
ぼなせ。
えええ?!
ドイツ映画祭、やらないんですかー?!
他の小さい会場でひっそりやってくれるとかはないんでしょうかね・・・。

で、マダムとかぶった作品は3本でした。
そのうち2本がこれらです。
でも、この2本はオネム状態で見ていた感じです・・(^_^;

今回の映画祭のマダムテッロ賞はどのへんでしょうー?

虐殺の世界史なんて本を読んだことがありますが、教科書に載っていないものってたくさんあるんですよね・・。
Posted by かえる at 2008年05月10日 01:36
>刑事自身も若年性痴呆症の妻
という設定、日本の映画でありませんでしたっけ?確か刑事は役所広司とかで。

「半落ち」ですかね?
Posted by かえる at 2008年05月10日 01:37
★nouilles-sautees さん
そうなんですよ! モーリッツ君も最近売れっ子ですよねー!
今回はヒロインの運命に関わる重大なトルコ兵の役でした。 
色んな国の役者さんが集まってそれぞれの言葉で演技してたように見えましたが、それがイタリア語吹き替えになってましたよ(^^;)
上映時間が上手く合わずに見逃してしまうって凄く残念ですよね〜 上映期間も短かかったっていうのは、その・・やはりフランスでの関心度が低い?との判断なんでしょうかしら・・移民の問題も難しそうだし、一応映画館に掛かっただけでも良かったのかも?
  >邦画で若年性痴呆症の刑事の妻
は、↑で かえるさんが答えて下さってますが、多分それでは? 寺尾聡と原田美枝子の『半落ち』かもですね(^^)


★かえるさん
ぼなせーら♪
ドイツ映画祭開催中止の情報はですね、伊映画祭会場内での会話からの情報なんです〜 正確にはどうなんだか・・(^^;)ネットで検索しても全然引っかかって来ないですよねぇ?
そうね〜どこかのミニシアター使って規模は小さくてもやったらいいのにね。。

 >マダムテッロ賞!!
そうですね〜7本観た中では作品賞はやはり「日々と雲行き」次点が「土星」、「ひばり農園」が特別賞で、「カラヴァッジョ」は美術と撮影賞ですかね〜〜
映画は私にとっては知識の泉です〜〜
Posted by マダムS at 2008年05月10日 15:45
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